ビジネスにおける問題解決・知的生産の教科書・本はたくさんあります。しかし、たくさん読むのは大変です。昔に読んだ書籍を読み返しておすすめを整理しました。
「問題解決」の形は一つじゃない
今回整理した本は以下の5冊です。
どの本も自身に大きく影響を与えてくれた良書なのですが、まとめて読み返すとそれぞれの本の焦点が異なることに気が付きました。
そこで、それぞれの本の焦点とキーとなるメッセージから整理しました。
イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人

論点思考 BCG流 問題設定の技術/内田和成

問題解決プロフェッショナル「思考と技術」/齋藤嘉則

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」/細谷功

外資系コンサルの知的生産術/山口周

「問題解決・知的生産」本のおすすめ
まず、それぞれの本を整理するために問題解決のプロセスを「問題発生」、「イシュー・論点の特定」、そして「問題解決」の3つに大きく分けてみます。
ここでの一つのポイントは、「何か問題が発生した」ということはあくまで現象であって、
それ自体が「解決するべき問題、課題=イシュー、論点」なのかはわからない
という点かと思います。例えば「論点思考」では以下のように説明されています。
事例「会社に泥棒が入った」
「会社に泥棒が入った」ことは論点ではなく、現象もしくは観察事実である。
企業経営の場合、学術的研究とは違い、すべての論点に対応すべきではない。焦点を絞らないと、効果のある解決策を作り、実行するのはむずかしい。
論点思考 BCG流 問題設定の技術/内田和成
また、似たような「知的生産」という言葉ですが、「イシューからはじめよ」では「答えの出す必要性の高い問題に対して答えを出すこと」と言えるでしょうし、「外資系コンサルの知的生産術」では「情報に知的な処理を加えてアウトプットを出すこと」とあり、いずれも「問題解決」という概念が内包している「対策案の実行」は含まれていないと考えられます。

そのため、「知的生産」は「問題を解決するために答えを出す」までの工程を指し、「問題解決」は「その後の対応策の実行」工程を含む概念と呼べるのではないでしょうか。
そんな中で、以下の通りおすすめ本を表に整理しました。
書籍 | 焦点 | キーメッセージ | おすすめ |
イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」/安宅和人 | •知的生産 •イシュー(知的生産プロセスの最上流)の特定 | 知的生産のプロセス 1. イシュードリブン 2. 仮説ドリブン 3. アウトプットドリブン 4. メッセージドリブン | •驚異の説得力 •マーケティング×ニューロサイエンス、研究者×コンサルの組み合わせの深み •研究者、戦略家など高度な知的生産に関わる人 |
論点思考 BCG流 問題設定の技術/内田和成 | •論点(問題解決の最上流工程)の特定 | 論点設定のプロセス 1. 論点候補を拾い出す 2. 論点を絞り込む 3. 論点を確定する 4. 全体像で確認する | •論点(イシュー)に対する別の切り口、感覚的 •実践的・実務的に汎用可能 •論点強化したいコンサル、企画、戦略担当 |
問題解決プロフェッショナル「思考と技術」/齋藤嘉則 | •問題解決の思考法・技術・プロセス | 1. 思考法(ゼロベース思考・仮説思考) 2. 技術(MECE・ロジックツリー) 3. プロセス(ソリューションシステム) | •基礎的な思考法・技術・プロセスを網羅 •汎用性高 •基本所作を学びたいホワイトワーカー全体におすすめ |
地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」/細谷功 | •問題解決に必要な思考法とそのトレーニング(フェルミ推定) | 1. 仮説思考力 2. フレームワーク思考力 3. 抽象化思考力 | •思考法体系とトレーニング法に重み •基本所作を鍛えたいホワイトワーカー全体におすすめ |
外資系コンサルの知的生産術/山口周 | •知的生産(価値ある情報処理・成果物生成) | 知的生産のプロセスにおける「行動の技術・心得」 1.知的生産の戦略 2.インプット 3.プロセッシング 4.アウトプット +知的ストックを厚くする | •実践的・実務的な心得の詰まった知的生産本 •エッセンスを吸収して即実行したいコンサル、企画、戦略担当 |
どれか一つを必ず選べと言われると今の私は「イシュー」かなと思いますが(とにかく読み物としても面白く今読んでも搾れる+プロセス・思考法を網羅している)、実践の難しさも格別感があります。
また、私は「論点思考」を読んで初めて「イシュー」への理解が深まった感があります。
「問題解決プロフェッショナル」「地頭力」はベースとなる思考法や技術について丁寧に書いているのでこれを読んでおけば他の本の理解が進みやすいと思います。
「外資系~」は様々な同様の書籍のエッセンスを濃縮してくれているようなお得感があります。
なぜ時々は基本所作を見返すべきなのか
私にとって今回の読み直しは、イシュー/論点の重要性に立ち返る良いきっかけになりました。
そして私たちは「なぜ基本所作を維持することが難しいのか」に想いをはせます。
ゼロベース思考で得たアイデアはしばしば固定観念に縛られた人の反感を買いますし、
明確なポジションを取ることは常に敵を作ることに繋がります。
ある問題のイシュー/論点が仮に特定の権力者の存在だったらその問題は往々にして解けません。
私たちにはこれらの所作と技術を発揮するために、さまざまな感情的な軋轢を乗り越える強いリーダーシップや泥臭い人間力が必要とされるのです。
そして実際私たちの行動を阻むのは知識や技術の不足ではなく、リーダーシップや人間力なのです。
だからこそ、私のような凡人は時々はこういった本を読み返し、賢くたくましい先人たちの後押しを必要としているのだと思います。
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