どんなに知識・技術があったって、英語が出来たって、リーダーシップがないと成果は達成できないということにはたと気づき、おすすめのリーダーシップ本を読み返してみました。
「リーダーシップ」と「マネジメント」
リーダーシップとマネジメントは共に成果を達成するための概念ですが、各々意味するところは異なります。
リーダーシップが「組織を引っ張っていく」イメージを持つのに対し、マネジメントは「上司として部下を管理する、リソースをやりくりする」イメージがあります。
前回に問題解決や知的生産スキルに関する本を紹介しましたが、「組織を動かすリーダーシップなくしては何も変えられない」と思い、リーダーシップ本を読み返すことにしました。
そのため、重なりはあれど、今回の焦点はマネジメントよりもリーダーシップです。
今回おすすめするのは以下の4冊です。
採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの/伊賀泰代
「リーダーシップは全員が持つべきもの、そして学び・鍛えることができる資質である」
「リーダーは管理者でも調整係、世話係でも指示を出す人でも役職者でもなく、成果にコミットする人」
「日本に必要なのはリーダーシップの総量」
この本には目が覚めるような強いメッセージが多く含まれています。
元マッキンゼーの採用マネジャーの伊賀さんの著作。
このリーダーシップの発揮は周囲に「成果主義」という強固な目的意識の共有が必要であることは本書でも述べられていますが、私はこれが現状のすべての組織で発揮できるものだとは思いません。
組織としての高いリテラシーも求められると思います。
むしろマッキンゼーという組織がいかに非常に高い品質を維持しているか、という組織設計論として読みました。

結果を出すリーダーはみな非情である/冨山和彦
「ミドルリーダーこそが時代を動かしてきた」という視点から、日本企業の中間管理職向けに書かれた冨山さんの著作。
結局、リーダーシップを目指すということは清廉さとは無縁の論理的かつ冷徹な意思決定をいかに行い、それをいかに情緒的に周囲を説得するか、というところに尽きる。
リーダーとして成果を達成するためには頭でっかちじゃダメで、人間力がモノを言います。
「人間の行動は性格とインセンティブの奴隷」など、人を見るときに役立つ知見が結構あるのでその点もおすすめ。

ハーバード流ボス養成講座 リーダーの3要素/リンダ A.ヒル , ケント ラインバック
こちらはマネジメントはリーダーシップを包括する、連動するものだという考えのもと書かれたマネジメントの本です。
成果を出すために人にどう影響力を与えるかという点を網羅的に記載してくれており、教科書的に一度は通るべきかなと思います。
日米のコミュニケーションは文化背景が異なるので、米系の本を参考にするのは危険という意見もあるかと思いますが、
マネジメント・リーダーシップとは、混沌に対処することであるという点ではどこでも同じです。
上司をしている人には実務的に役立つ一冊です。

最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと/マーカス バッキンガム
これは名著ですね。リーダーとマネジャーは全く違うものであるという定義づけのもと、
リーダー、マネジャー、継続的な成功の裏にある「隠れた原則」を解き明かすという本です。
行動の指針に使うことができるエッセンスが凝縮されているので、万人におすすめできる本です。
きっと直感とは違う、とても示唆に溢れた考え方を示してくれるはずです。

各書籍のリーダーシップの比較
以下の通りおすすめリーダーシップ本を表にしてみました。
リーダーシップの定義からして様々です。
どれか一冊ということであれば、「最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと」が万人向けかつベースとなる指針を与えてくれるので良いです。
書籍 | リーダーシップ/マネジメント | キーメッセージ | おすすめ |
採用基準 地頭より論理的思考力より大切なもの/伊賀泰代 | •リーダー:チームの使命を達成するために必要なことをやる人/マネージャー:部下の労務管理・仕事の進行管理や品質管理予算管理 •リーダーシップは成果主義とセット、全員必要・学び、鍛えるべき資質 | •「マッキンゼーが求めるのはグローバルリーダーになる人」 •リーダーのタスクとは、1. 目標を掲げる、2. 先頭を走る、3. 決める、4. 伝える •「不足しているのはカリスマリーダーではなく、リーダーシップ・キャパシティ(リーダーシップの総量)」 | •グローバルリーダーを目指す人 •マッキンゼーのリーダーシップを知るのに最適の一冊 |
結果を出すリーダーはみな非情である/冨山和彦 | •真のリーダー:深刻な利害対立が生じているときにトップダウンで物事を決める/現場リーダー:みんなの心をひとつにして、同じ方向に向かって進んでいく | •「君主論」の日本企業ミドルマネジメント版 •情緒的直感は人を殺す(合理的思考・リアリズムの徹底追及) •コミュニケーションは情に訴えしつこく根負けを誘う | •日本企業で働く中間管理職 •出世すると決めた人 •実務に直接役立つ •綺麗ごと抜きのリアルなリーダーシップを知るのに最適の一冊 |
ハーバード流ボス養成講座 リーダーの3要素/リンダ A.ヒル , ケント ラインバック | •マネジメント:チームの成果が上がるよう人々に影響を及ぼす上で必要な取り組みすべて。「リーダーシップを含む」→「どうやって影響力を行使するのか」「他人の行動、発想、感情をどうやって形作り、ひいては変えさせるのか」 | •3つの課題は1.自分のマネジメント、2.人脈のマネジメント、3.チームをマネジメント •マネジメントは逆説によって成り立つため、正しいマネジメントは「どう判断を下すか」にかかっている •押し寄せてくる仕事をチームを前進させるマネジメント・ツールとして使う | •上司・チームのまとめ役 •実務に直接役立つ •学ぶべきポイントが網羅された教科書 |
最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと/マーカス バッキンガム | •リーダー:より良い未来に向けて人々を一致団結させる、マネージャー:部下の才能を業績に結び付ける一番の方法を見つける •リーダーとマネジャーは違う •全員がリーダーであるべきではない(独自かつ並大抵の難しさではない) •リーダーには才能が必要 | •マネージャー「部下一人ひとりの特色を発見し、それを有効に活用すること」 •リーダー「普遍的なことを発見して、それを活用する」 •継続的な成功「自分がしたくないことを見つけ出しそれをやめる」 | •上司・チームのまとめ役 •リーダーになりたい人 •成功し続けたいと願うすべての人 •どう考えるべきかの指針を与えてくれる重要な一冊 |
共通することとしては「決めること」「伝えること」ですね。前の2冊は「合理的に決めること」に焦点があり、後の2冊は「未来を示すこと」に重きが置かれているように感じました。
リーダーシップがある程度は学べるものだろうと大きくは才能によるものだろうと、
それなしでは何も変えられない、成果を出せないものだということは間違いありません。
読書と併せて実践が大事ですね。
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