経営学のコンセプトを自分の人生に活用して考えるという山口周さんの本を読みましたので感想を綴ります。
「人生・生活」と「経営戦略」という一見かなり遠く離れた二つを掛け合わせることで、新たな視点を与えてくれる本です。掛け合わせの妙で新たな価値を生んでいると思います。
私たちの限られた時間資本を戦略的に投資することが大事だということを改めて思いました。
サブスク使い放題社員やってる場合じゃないです。
人生とは時間資本を別の資本に変えるプロジェクト

本作中では、時間資本を人的資本、社会資本、金融資本に変え、ウェルビーイングにつなげていくという流れを図式化してくれているのですが、衝撃的に分かりやすく美しい図です。
私はこのコンセプトの明瞭さと美しさがこの本の一番の魅力だと思いました。
私たちは時間資本を人的資本(スキル・知識・経験)に変え、それが社会資本を作り、金融資本を形成する。時間資本は社会資本や金融資本には直接投下しても意味がない、ということで、
異業種交流会などをバッサリ無意味とされています。
二度といかんとこと思いました。
つまり「金融資本を生み出すのはその人の持っている信用・評判・知名度などの社会資本であって、知識・能力・コンピテンシーなどの人的資本ではない」ということです。これはキャリアを考える上で非常に重要な点であるにもかかわらず、多くの人が誤解している点です。
社会資本が新たな社会資本を、そして金融資本を生み出すからこそ、私たちは学歴や資格といった自身のラベルを欲しがります。
私が海外MBAを志したのも、自身のラベリング、マーケティングという側面もあります。
低成長の時代にあっては、「どこにいるか」が自己資本投資の効率の面でこれまで以上に重要だと言いますが、
「どこにいることができるか」を決定づけるのもまた人的資本ではなく、まずは社会資本であると言えるでしょう。
その「場所」もあなたに何ができるか(人的資本)を事前に知ることはできないからです。
その「いる場所を選ぶ」という意味で、学歴も資格も重要であり続けるでしょう。
しかし、むしろ重要であり続けるのは「実績」と呼ぶべきかもしれません。
社会資本は大事ですが、それを作るのは人的資本です。
学歴や資格というのはその中でも分かりやすく、作りやすい実績の一つです。
(社会資本そのものを直接作ろうと試みたり)履き違えないように注意が必要ですね。
ポートフォリオ作りのアート
人生の目的は常にウェルビーイングを維持し続けるところに設定されているので、
現在のウェルビーイングの達成に必要な自己資本を「今」に充てることは必須であるということになります。
将来のために「今」を犠牲にし、「我慢」が過ぎると目標未達ということです。
同時に、長期の合理のために短期の不合理を取るというバランス感覚が必要になり、このポートフォリオ構築が経営の妙とも言えるのでしょう。
注意しなければならないのは、こと最終的なゴールである「ウェルビーイングの実現」ということに関して言えば、前者の「仕事をする上で役に立つ資本」は、「社会資本の形成」や「金融資本の形成」を通じて、間接的にしかウェルビーイングの実現に貢献しないのに対して、後者の「人生を豊かにしてくれる資本」は、直接的にウェルビーイングの構築に貢献してくれる、という点です。 この点をしっかりと意識しないと、時間資本を「仕事をする上で役に立つ資本」の構築だけに偏って投下してしまうという致命的なミスを犯してしまう恐れがあります。
単に今を大事にするとともに、長期投資も大事にせよと言われると、
時間資本が十分にないと言いたくなりますが
そこを何とかするのが経営(資源が潤沢にあればそもそも戦略なんて必要ない)ということかと思います。
アメリカ駐在員は日米の時差の関係もあり、一般的に労働時間が長い人(夜が遅い)が多いです。
駐在員の幹部職は会社からするとサブスク使い放題のようなものなので
仕事に自らの生活を侵食させずにポートフォリオを守り抜くための努力が必要です。
結局何に時間資本を投資すればよいのか
流行りもののスキルや知識をこぞって習得しようとしている様に対して、山口さんは以下の通りコメントしています。
供給量が大きく増加することが予測されるスキルや知識を獲得するために時間資本を投資するのは、戦略として悪手というしかありません。逆に言えば、需要に対して供給量の少ないスキルや知識は、労働市場で非常に高い価値を持つことになります。
考えさせられるひと言です。
将来の需要量なんて分かりっこありませんので、分かることは「流行っているスキルや知識は将来供給量が増加する」ということになります。
自分なりに考えて何に時間資本を投資するかということが重要になるのでしょう。
私が感じるのは、
流行っているスキルでも市場価値があるところまで高められる人はそう多くはない
まだ現在の日本では英語と経営に関する言語を共にそこそこ高いレベルで扱える人は大事にされる
ということです。
英語がものすごく上手な人はそれこそごまんといますし
経営の専門性が高い人もたくさんいるのですが
片方のスキルが尖っていて、もう片方がいまひとつという人をしばしば見ます。
ですので両方バランスよく分かる人となるとかなり減るという印象を持っています。
そのため単一のスキルだけで見るのではなく、組み合わせにおいて需給を考えるという視線も大事かもしれません。
英語・経営学の学習は、共に習得に大変な労力と時間がかかります。
TOEICのスコアや資格、MBAといった社会資本も大事で魅力的なんですが、
あくまで社会資本を裏付けてくれるのは人的資本であるということを肝に銘じて
今日もコツコツとシャドーイングに取り組みつつ、
自分の人生戦略について、考えて考えて考え抜きたいと思います。
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